なだらかな線を描く影が壁を這い
やわらかな光をふちどる
浮いては沈む記憶のかけらを
つかまえるでもなく追うでもなく
ただぼんやりと見つめていたい夜
何ものにも変えがたいのは
何もなくて
すべてがあるような
何も言わないのに
すべてを言い尽くしたような
ほんとはとても大切なのに
みんなどうでもよく思えるような
そんな時間なのだ
そういう時を過ごせるのなら
わたしはもう何もいらない
何もしなくていいかな
今夜は
過ぎ去った空間を
掌の中でそっところがしていてもいいかな
壁を這ううっすらとした影が
あまりにもやさしいから
今夜は
このまま眠ってもいいかな
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